トレンチコートのお話

トレンチコートが日本人に好まれて普及したのは今から37年ほど前です。その頃私は貧乏な学生で(今でも貧乏ですが)アウターは厚地の木綿のジャケットをコート替りに着用して、寒い北国の冬を凌いでいました。春の始めにちょうどよい良いコートがありません。3月から4月にかけてはまだコートが欲しい時期です。オーバーコートのように厚くない、しかし寒さをしのげておしゃれなコートが欲しいなと思っていました。

トレンチコートを初めて見たのはとても寒い、私の誕生日の夜です。おつきあいが始って最初に向えた私の誕生日に彼が奮発してプレゼントしてくれたのが、それまで見たことも無かったトレンチコートでした。40年近く前でも1万円では買えなかったかな?かなりの高級品だったなという鮮明な記憶があります。

「トレンチコートはね」と彼は少し自慢気に言いました。「レインコートにもなる、どちらかと言えば春向きコートだからね。君の誕生日にはぴったりだと思ったよ」私は3月生まれ。まだ肌寒い春の初めです。確かに厚めのウールのコートでは合いません。かといってコート無しではいられない季節です。インナーにはセーター、ボトムはスカートでもOKだし、スーツの上でもいい。通勤着でも、ちょっと改まった席でも着ていくことの出来る応用の広いデザイン。

トレンチコートは何と今でもタンスの奥にしまってあります。ダイエットできればいつでも現役!トレンチコートはそんなコートなのです。何年たっても着られる。いつまでも現役でいられるコート。多少デザインの変化はあっても基本的スタイルは変りません。40年近く前のコートが着られるということは、素晴らしいことではありませんか。

トレンチコートは色々な意味で私にとっては大切な宝物になっています。コートをハンガーにかけて眺めていると、当時の懐かしい日々が甦ってくるのです。「トレンチコートはね」彼は誕生日の夜にプレゼントのコートを私の肩に掛けてくれながら、その頃容姿にコンプレックスを,持ち、女らしくない!と悩んでいた、がりがりショートヘアの私に言いました。「トレンチコートを着るとね、不思議だよ」「え?どういう風に??」「女らしくなりたいと思っている人が着ると、どんなヘアスタイルでもね、例えばベリーショートでも不思議と女っぽいんだ」「へええ?」「それでね、逆にちょっと女のなよなよから開放されたいと思えば・・・マニッシュな感じにもなるんだよ。不思議だろう?」、